シンガポールは観光地としても日本国内でも知名度があり、日本人の就職先としても非常に人気の高い国です。
シンガポールに訪れた事が無い人も、マーライオンや美しい夜景の事はよくテレビでも見るのでご存じだと思います。
都市国家であり島国でもあるシンガポールは、国土で見れば非常に小さいです。しかし、人口密度や経済のレベルは高く、先進国の1つに数えられています。
今回は、そんなシンガポールで就職する際の情報についてご説明します。
シンガポールの基本情報
概要
シンガポールの首都は国名と同じシンガポールで、元々はマレーシアに属していました。イギリスの植民地支配から独立したマレーシアとシンガポールですが、マレーシア政府とシンガポールとの関係が悪化し、合意の元分離独立を果たしました。
特筆すべきことは、東南アジアの国家でありながら、貿易や金融の中心地の1つだということです。発展途上国が多い東南アジアにある国の中で、異質な存在となっています。
世界第4位の金融センターがあり、世界第3位の外国為替市場もあります。ビジネスを展開するにあたっては、最も良い国と評価されています。
人口は約554万人で、民族で分けると74%が中華系、マレー系は13%、インド系が9%です。宗教は多種多様で、仏教、イスラム教、キリスト教、道教、ヒンズー教などが信仰されています。
通貨はシンガポールドルを採用しており、失業率も非常に低い水準となっています。貿易額を見ると、輸入よりも輸出が上回っており貿易黒字国です。
名目GDPを見てみると、1980年ころより上昇していますが、近年になり成長するペースが鈍化しました。シンガポールは、国土も小さく製造国としては厳しい環境なので、これからは成長するペースが落ちることが予想されています。しかし、国土とのバランスを見れば、非常に高い水準の国家であることは間違いありません。
日本との関係も深く、シンガポールとの間には日本で初めてのEPAが発行されています。日系企業の数は、2015年12月の時点では854社にもおよび、多くの企業が進出していることがわかります。
在留邦人も、2015年10月の段階では約37,000人です。海外転勤なども含め、シンガポールは現実的に就職や勤務するチャンスが高い国と言えます。
シンガポールの気温や地理
シンガポールは、東南アジアの国家ですので、日本と比べるとかなり温暖な気候となっています。平均気温を見てみると、年間を通して毎月26度から28度までの間で推移しており、夏と冬の温度差が激しい日本とは全く違うのが良く分かります。
最高気温の平均は年間を通して30度程度、最低気温は24度程度となっています。毎月ほぼ同じ温度なので、服装を変更する必要がありません。
外出するときは、半袖に半ズボンや長ズボンで構いません。ただし、ホテルやショップなどは冷房が効いていることが多いので、室内に居るときはカーディガンなど羽織るものがあると良いでしょう。
シンガポールの11月から2月は、いわゆる雨季に当たります。東南アジアの国家に多いスコールも頻発しますので、雨対策は必須です。3月から11月は乾季ですので、あまり雨は降りません。しかし、乾季でもスコールは起こりますので、1年通して雨対策することが大切です。
シンガポールの物価
東南アジアの国家は日本と比較すると物価が安い傾向にありますが、シンガポールは先進国の1つですので、それほど日本と物価は変わりません。むしろ高いくらいです。
ローカルフードは安くて旨いが・・
まずは食事に関してですが、レストランなどを見ると日本よりも多少高いという印象を持つことが多いです。さらには、アルコールはサービス税とGSTと呼ばれる税が加算されるので、日本に比べるとかなり割高に感じます。
ローカルなレストランやフードコートなど手軽に食べることができるところでは、1食300円から500円程度で済ませることができます。
インフラは安い
タクシーやバス、MRT(地下鉄)などは日本に比べるとかなり安いです。タクシーの初乗りは250円ほど、バスの初乗りは50円ほど、MRTは100円以下で初乗りすることができます。
タバコが非常に高いのが特徴で、種類によっても違いますが1,000円を超えることが多いです。新聞は70円程度、日焼け止めは1,200円程度など、日本に比べると高いものと安いものの差が激しいのが特徴です。
家賃は香港並みにクレイジー
シンガポールの家賃ですが、東京と比較してもかなり高い水準です。近年若干家賃の相場は落ちていますが、それでも1LDKを賃貸すると20万程度は見ておきたいところです。郊外に行っても、15万程度の家賃が必要になります。
日系駐在員と言えば高級マンションでリッチな生活・・・を想像しがちですが、香港とシンガポールにおいては日本のマンションレベル(2LDKなど)でも30万円ー40万円の家賃がかかる為、現実的には結構普通の暮らしをしています。
シンガポールの言語
シンガポールは世界の金融都市として機能していますので、様々な言語が話されています。国語に関しては、マレー語を採用しています。
公用語は幅広く、ビジネスの場面では主に英語と中国語が使用されています。ホテルや格式の高いレストランでは、英語を話すことができるスタッフが多いです。一般家庭においては、華僑だと中国語を使用しており、その他ではマレー語やタミール語が使われています。
ビジネスにおいて用いられる英語は、香港と比較するとかなり水準が高いように個人的には感じます。ただし【Singlish(シングリッシュ)】と揶揄されるように、かなり訛りが強い独特の英語を話す人が多いです。
その為、英語ネイティブの欧米人は理解できず、英語が苦手な日本人の方が英語でのコミュニケーションができてしまったりという不思議な現象が良く発生します。
シンガポールの治安
シンガポールは、治安の面では日本以上に良いというデータがあります。犯罪発生率を見ても、日本の3分の1程度の数字なので、犯罪に巻き込まれる可能性は、日本よりも大幅に低いです。
ただし、犯罪発生率が低いと言っても、完全に犯罪が起きない訳ではありません。日本に住んでいるときの同じような警戒心を持つことが大切です。
シンガポール人の仕事ぶり
先進国の1つですので、仕事ぶりは他の東南アジアにある国家と比較すると、内容としては優れています。しかし、サービス業に関しては、日本ほどのおもてなしの精神はありません。こちらから要望しなければ、メニュー表を持ってくるなどのサービスを行わないことがあります。
オフィスでの仕事ですが、効率良くしっかりと働いてくれる人が多いです。しかし、労働者としての権利に対する考えが強く、有給休暇などはきっちり取ります。
また、シンガポール人は転職を恐れる人が少ないです。ここの職場の労働条件が悪い、自分と合っていないと判断すると、すぐに転職します。
・・・これはある意味当たり前のことであり、日本企業の慣習が異常なのだと思います。日本だと、権利を主張する前に貢献しろ!という文化が未だに根強いですからね。
シンガポール人の人柄
シンガポール人は、効率性を重視する傾向にあります。無駄なことや必要ないことは、極力避けるようにします。
また、プライドが高く負けず嫌いな側面があります。自分たちに誇りを持っており、競争することが大好きです。完璧主義的な考え方を持っていることが多く、他人には負けてはいけないと教育されています。
ただ、個人的な経験上では彼らも仲良くなってしまえばとても良い友達に慣れる事が多いです。仕事を一緒にする場合は、出来るだけ早く彼らの懐に潜り込めるようにコミュニケーションを取って仲良くなる事が、結果的に仕事全体を円滑に進める上でも役立ちます。
香港とシンガポールの違い
物価が高かったり、法人税が安かったり、国際的な金融・貿易都市である香港とシンガポールは度々同じように並べられますが、実際のところはかなり違った国です。
シンガポール
シンガポールはマレー半島から独立し、リー・クァンユー首相の下、国民の守るべきことなども細かく決められた独裁国家であり、資本主義でも国家主導の国家資本主義と言えます。
計画的に整備された清潔な街並みや、ゴミを捨てたら罰金・子供を学校に行かせないと罰金・殺人や麻薬関係は厳罰・・・など、非常に厳しいルールの下維持されている国です。(明るい北朝鮮という人もいる)
香港
一方、香港は長きにわたりイギリスの植民地であり、今では中国の一国二制度のもと成り立っている資本主義の国です。
近年は英語の教育よりも普通話の教育が盛んになり、ビジネスの相手も中国人向けになってきています。
個人的にはシンガポールは【清潔で退屈】、香港は【猥雑でエキサイティング】という印象です。香港の方がまだ中国っぽさと過去のイギリス領の面影がミックスされたカオス感があり、人々はエネルギッシュでたくましく、魅力的な国だなーと思います。(個人の意見)
シンガポールの就労ビザ取得条件
取得条件・概要
ビザ名称 | EP Pass、S Pass |
学歴 | 原則大卒以上(S Passは専門卒・短大卒可能性あり) |
職歴・経験 | 職務経験3年以上が目安 |
働ける業種 | 制限なし |
最低基本月収 | EP:3,300Sドル~ S:2,200Sドル~ |
ビザ取得はなかなか厳しい
1990年~2000年前半に海外からの労働者を大量に雇用した事で、国民からの不満が噴出した事もあり、自国の雇用の保護を最優先とする国策を取っています。
駐在員等の、現地海外法人でのマネジメントなどであれば比較的ビザ取得は容易ではあるが、現地採用者にはなかなか厳しい状況が続いています。特に、大卒・関連の実務経験3年以上というのが今ではほぼ必須に近いです。
出来るだけ今までの経験を活かせる求人を探す事がシンガポールでの就職の近道となります。
EPパス=管理・専門職向け
EPパスの取得条件
①シンガポールにて管理職または専門職として就職するためのオファーがある。
②基本月給が3,300Sドル以上(実際通る申請は4,000Sドル~が多い)
③シンガポール政府が認知した大学の卒業資格、専門技術資格または専門職位。
特に、③の【政府が認知した大学卒】というところからもわかるように、シンガポールの就労ビザは学歴も重視する。国公立・有名私立大学卒の場合比較的ハードルが下がる。
以前はEPパスもP1/P2/Q1と3つのランクがありそれぞれ最低給料や更新時期などに差が設けられていたが、現在は廃止された。(2015年8月付)
Sパス=熟練労働者向け
①最低基本月給が2,200Sドル
②大学または高等専門学校卒業、短大卒
③または専門技術資格の保有者で、関連の実務経験がある人
SパスはEPパスに比べて条件が緩いが、採用する側(雇用主)のローカル社員数の20%まで(サービス業は15%まで)しか申請取得できない。
また、雇用主に対してはSパス保持者を雇用することで1人あたりに外国人労働者雇用税が課せられる。
シンガポール求人の状況
上記で紹介した通り、近年就労ビザの基準厳格化が進んでおります。実務経験がある仕事に就く事がキモであり、未経験者・新卒でのシンガポール就職はハードルが高いです。
とはいえ、駐在員・現地採用含めシンガポールで働く日本人はたくさんいる為、日本人向けのサービス業でも常に求人があるのが現状です。
現地採用
飲食店、美容師等のサービス業求人が多いです。特に、飲食関連においては日本食ブームは継続していますし、日本人向けの飲食も好調です。
他にも、一般企業(メーカー、商社など)の現地採用求人もありますが、駐在員との待遇・給与格差はかなり開きます。
特に、シンガポールは家賃や食費などの物価が東京の水準より高い為、給料や待遇の良い仕事を探す事が非常に重要です。
日系駐在員
日系企業のシンガポール求人でも、駐在員待遇を受けられる募集は少ないですが定期的に出てきます。特に、金融や貿易関連等、専門性の高い業種はハイレベルで高待遇な傾向があります。
個人的には、日系駐在員か外資系採用を優先的に探す事をおすすめします。(手当や給与が全然現地採用とは違いますので)
外資系採用
今私は欧州資本の外資系に転職し、香港で働いていますが、可能であれば外資系で働くのが一番お勧めです。給料も待遇も悪くないですし、日本の社畜的文化が無いのも精神衛生上良いです。(レイオフ=リストラのリスクはありますが)
ただし、外資系の求人は英語ビジネスレベルを要求される事、求められる専門性やマネジメント経験も比較的高い事が多いのが難点です。また、競争率も非常に高いので定期的な海外求人のチェックが重要です。
駐在員待遇、外資系を狙おう
特に日系の現地採用の場合、家賃手当なし、給料安い、仕事はキツイの三拍子が揃う事があり、シンガポールのように物価の高い国だと日本にいる時よりも生活が苦しくなってしまう可能性があります。
もちろん、現地採用でも良い職場はたくさんあると思いますが、高待遇の求人を見逃さないようにする事、特に『家賃補助の有無』を確認する事が非常に大切です。
シンガポール就職の進め方
では具体的に、シンガポールへの海外転職を進めていくにはどうしたらよいでしょうか?
海外求人、特に駐在員求人や外資系求人は高待遇な求人が多い為、競争率が非常に高いです。
一度でも転職サイトで海外求人を探した事がある方なら分かるかと思いますが、人気の無い待遇の良くない求人ばかり残っていませんでしたか?
良い求人はすぐ応募が殺到します。万人にオープンになっている求人で、良い条件の職に出会えるチャンスがかなり低いです。
良い求人を探す時のポイントは【非公開求人で優先的にオファーを貰う事】です。一般的な転職サイトの公開求人よりも質の高い求人を紹介してもらえるチャンスが非常に増えます。
個人的には【海外転職に強い大手転職エージェント】+【現地密着型のエージェント】の両方に登録してオファーを待つのがおススメです。現地密着型と大手エージェントをおさえておけば、かなり広範囲に求人をカバーできます。
海外就職に強い転職エージェントは、求人件数が圧倒的に多いランスタッドと、国内最大手のリクルートエージェントの2つをおさえておけば間違いないです。
シンガポール密着型の現地エージェント
海外就職に強い転職エージェント
海外転職はエージェントを活用しよう!
駐在員候補や、外資系海外転職のハイレベルな求人は転職エージェントの非公開求人から探すのが一番です。
転職エージェントから紹介してもらえる非公開の海外求人は、ネット上で誰でも見れる求人よりも、待遇も仕事の濃さも段違いです。
海外求人に強い転職エージェントに登録して、【質の良い海外求人情報を誰よりも早く入手する事】が海外転職活動では非常に重要です。
どの転職エージェントを利用すればいい?
転職エージェントや転職サイトはたくさんありますが、海外求人を豊富に取り扱っている以下の2社がおすすめです。
- Randstad(ランスタッド)
- リクルートエージェント
ただし、海外転職に強いエージェントでも、それぞれ特徴や強みが違います。
自分の目的や理想に合わせて、最低2つはエージェントを利用する事が海外転職成功のカギ!
A:自分のキャリアやスキル、語学を活かしてハイレベルな海外転職をしたい人
【ランスタッド】+【リクルートエージェント】の2社がおすすめ。
B:職歴は浅くても海外就職に挑戦したい人
【リクルートエージェント】と【キャリトレ】がおすすめです。
リクルートエージェントは、日系駐在求人から現地採用求人まで幅広い海外求人を揃えている為、キャリアアドバイザーと相談しながら自分にあった海外求人を見つけることができます。
キャリトレはビズリーチが提供する、若い世代向けの転職サービス。スマホアプリで簡単に海外就職の求人リサーチができます。
C:海外求人や英語を生かせる求人を気軽にチェックしたい人
【キャリトレ】がおすすめです。
エージェントではなく、スマホアプリで自分にあった求人を毎日気軽にチェックできます。
若い人向けの求人が中心で、海外求人も職歴が浅くても応募しやすい求人を見つけることができます。
まとめ
シンガポールは、生活面においては海外の中でも暮らしやすく、治安もよく、食事もおいしい為、日本人が暮らすにもおすすめの国です。
ただし、シンガポールで働く為には就労ビザ条件や、物価の高さを補えるある程度の収入を得る必要があったりと、会社選びは結構大変です。
シンガポール就職を目指して転職活動を進めるなら、『シンガポール密着型エージェント』と『海外就職に強い大手エージェント』最低それぞれ1社ずつは登録して進める事で、高待遇の求人を見逃すことなく進める事が出来ると思います。
あなたのキャリアやスキル、タイプに合わせてベストな転職エージェントのサポートを受けて、海外転職を成功させてください!